テイセン版ちょっとためになる話

創業ものがたり

社会の安全、生活文化の向上に貢献して一世紀

創業者 安田善次郎

創業者 安田善次郎

平成19年(2007年)当社は創立100周年を迎えました。当社創業の歴史は、日本における製麻事業の歴史そのものであり、その事業は、明治・大正・昭和の国運隆盛期を通じて、広く国家的貢献を果たしてきました。

明治のはじめに殖産振興の一環として政府の熱心な働きかけにより、機械紡績による製麻事業が各地に立ち上げられ、その一つが安田善次郎翁による当社の創業(明治20年)でした。金融事業を核としていた翁にとっては、製造事業への唯一の進出でもありました。

爾来、戦時をはさむ好不況の繰り返しの中で、当時の主要な産業素材の国産自給を図るこの事業の国策的重要性を痛感した安田善次郎翁は、製麻各社の合併を提唱、明治36年に「日本製麻株式会社」が、明治40年(1907年)7月には、当社の前身である「帝国製麻株式会社」が設立されました。なお、大正2年に新築された帝国製麻本社ビル(写真)は辰野金吾博士の設計によるもので、明治を代表する建物の一つとなっています。

帝国製麻本社ビル

辰野金吾博士の設計による帝国製麻本社ビル(当時)

当社の事業は、急拡大する国の需要への応需と生活文化の向上に大きく貢献し、数々の足跡を残してきました。天幕・兵器覆・飛行機翼覆などに使われる亜麻帆布は、英国海軍省制定の規格による「最高品」の認定を受けたことから、欧州へも大量に輸出されました。また、船舶用では、逓信省の船用規格の合格品として、ハンモック・艙口覆などに使用されています。蚊帳、畳糸、消防用ホース、郵便用郵袋、鉄道貨車用幌などは、市民生活や公共サービスに欠かせないものとして広く普及し、救護天幕は関東大震災などの復興事業にも大いに活躍しました。現在当社の主力商品となっている消防用ホースは、明治36年に当社により国産第一号が生産されています。

服地、シャツ地、ナプキン、タオル、ハンカチーフなどの家庭用リネンは、欧州では古くから各家庭で伝承される品として親しまれ愛用され、生活文化を支えてきました。良質な生活を支えるリネン製品を幅広く用意し、リネン製品の百貨店での陳列会を開催するなどを通して、わが国での西洋生活文化の普及にも大いに貢献しています。

戦後に入り、昭和25年には、国策的企業として繊維業界で唯一財閥企業解体の対象となって分割され、更にその後の繊維産業の素材転換(天然繊維から化合繊へ)、産業素材としての麻素材への需要激減などから、苦難の歴史を歩む時期が続きました。しかし現在の帝国繊維は、社会的使命をきちんと果しうる事業基盤が築かれ、しっかりした経営基盤の上に立って今日を迎えています。

当社グループは、引き続き創業時から受け継がれた「社会の安全、生活文化の向上に貢献する企業」を基本理念とし、「一味ちがった優れた企業」「発展し成長を続ける企業」「社会や公共に大きく貢献する企業」の実現を目指してまいります。